『鬼滅の刃』は『鬼退治の物語』であると同時に、子供たちの『成長物語』でもあります。そのため、彼らを導く厳しくも優しい師匠たちは、重要な存在として描かれています。
主人公・竈門炭治郎には鱗滝左近次(うろこだきさこんじ)、我妻善逸には「じいちゃん」こと桑島慈悟郎(くわじまじごろう)がいます。これらの師匠たちは、彼らの成長に欠かせない存在でした。
一方で、嘴平伊之助には明確な師匠がいません。彼は呼吸法も独自に習得しています。しかし、明らかな剣術の師匠がいなくとも、伊之助はこれまでに出会ったさまざまな人々から影響を受け、「物語中でいちばん」とも言われるほどの成長を遂げています。
今回は、伊之助の成長に欠かせなかった「特に重要な人物」について取り上げ、伊之助がどのように影響を受けたかを見ていきます。
嘴平伊之助の成長を支えた人物たち
伊之助の成長に特に大きな影響を与えた人物として、以下の人々を取り上げます。
幼少期に出会った「おじいさん」と「その孫」
伊之助が幼少期に出会ったおじいさんとその孫・たかはるは、彼にとって初めての人間との接触でした。伊之助はこの二人から多くの影響を受けています。
鬼殺隊に入って間もない頃に出会った「竈門炭治郎」
伊之助の成長には、炭治郎との出会いが大きな影響を与えました。炭治郎との交流を通じて、彼は仲間としての絆を深め、戦闘技術も磨いていきます。
大きな存在感を残していった「炎柱・煉獄杏寿郎」
煉獄杏寿郎は、伊之助にとって強くて頼りになる存在でした。彼の勇気と決意に感銘を受け、伊之助自身も大きく成長していきます。
師匠:おじいさんとその孫・たかはる
伊之助に人間の言葉を教えてくれたのは、このおじいさんとその孫でした。物語の中で、伊之助は「イノシシに育てられた少年」として描かれていますが、人間の言葉を理解し話すことができたのは、この二人との交流のおかげです。
おじいさんの教え
伊之助の言葉遣いや教養は、おじいさんからの影響が大きいです。百人一首の読み聞かせを通じて、伊之助は難しい言葉や教養を身につけました。また、自分の名前が「伊之助」であることも、おじいさんから教えられたことでした。
たかはるの影響
たかはるは伊之助を「奇妙な動物」として見ていましたが、その言葉や行動を通じて伊之助は言葉を覚えました。しかし、たかはるの口の悪さもそのまま受け継いでしまったようです。
これらの人物たちとの出会いと交流を通じて、伊之助は人間として、そして戦士として大きな成長を遂げました。
師匠としての竈門炭治郎の役割
一緒に戦うことの重要性
伊之助は炭治郎や善逸と出会うまで、一人で戦うことしか知りませんでした。しかし、「一人では無理でも二人ならできる」という戦い方を、炭治郎と共に行動する中で学んでいきます。
ひとりで手柄を立てるよりも大事なこと
初めて炭治郎と一緒に戦った那田蜘蛛山での戦いの場面です。伊之助は最初、一人で向かっていきピンチに陥りましたが、炭治郎に助けられました。自分が前に出て戦うことに固執していた伊之助に対し、炭治郎は「俺を踏め!」と言い、伊之助に攻撃をさせました。この戦いの中で、伊之助は炭治郎の考えに気づきました。
良い作戦には素直に従うようになった
無限列車での下弦の壱・魘夢(えんむ)との戦いでは、自分が親分だと言い張りながらも、炭治郎の作戦が最善だと理解し、実行に賛成しました。その後、伊之助の技で再び頸の骨を露出させ、最後は炭治郎のヒノカミ神楽で頸を断ち、魘夢を倒しました。
伊之助の師匠としての炎柱・煉獄杏寿郎
無限列車編での成長
伊之助は無限列車編でさらなる心の成長を遂げ、その成長を大きく促したのが炎柱・煉獄杏寿郎でした。
命令を嫌う伊之助が従った理由
煉獄からの指示は、炭治郎に対するものと同じ内容でした。
「この汽車は8両編成だ。俺は後方の5両を守る。残りの3両は黄色い少年と竈門妹が守る。君と竈門少年は、その3両の状態に注意しつつ、鬼の頸を探せ!」
的確な指示と柱のオーラに、伊之助も従わざるを得なかったのです。
自分の力不足を痛感
煉獄が上弦の参・猗窩座と戦っていた場面で、炭治郎は「助けに入りたくても手足に力が入らない」と心の中で言っていますが、伊之助は「助けに入りたくても足手纏いになるだけだから入れない」と感じていました。これは、自分の意志で状況を判断していた証拠です。
煉獄の最期の言葉を胸に
煉獄は炭治郎と向き合って話していましたが、その言葉は伊之助や他の仲間にも向けられていたでしょう。煉獄は致命傷を負いながらも、伊之助の方を向いてくれていました。
誰かを思って泣いた初めての経験
伊之助が誰かの死を悲しみ、悔しがって泣いたのは無限列車編が初めてでした。隠たちに救助された後、伊之助が更に泣いていたことを、善逸の回想で知ることができます。
遊郭で煉獄を思い出す
遊郭での上弦の陸・堕姫との戦いでは、善逸と二人で戦ってもなかなか仕留めることができませんでした。伊之助は、煉獄の最期の言葉を胸に、自分に厳しい修業を課してきました。
煉獄の想いは、伊之助にも深く届いており、彼の成長に大きく影響を与えました。
自分自身で育てた「仲間への心」
「柱稽古」での交流
「刀鍛冶の里編」の後に行われる「柱稽古」では、炭治郎や善逸以外の鬼殺隊士とも交流を深めることになる伊之助。この経験が彼の心の成長に繋がります。
「柱稽古」は、岩柱・悲鳴嶼行冥による厳しい稽古の場面が象徴的です。那田蜘蛛山で出会った村田さんや、この場面で初めて名前が明かされた隊員たちとも再会し、交流を深めました。
「柱稽古」とは、柱から直接稽古を受ける特別な訓練のことです。鬼の出没が止んだ時期を利用して、柱より下の階級の隊士たちが順番に柱を巡りながら訓練を受けました。この稽古は、厳しい訓練でありながら、隊士たちの絆を深める機会にもなりました。
交流を持った仲間たちへの想い
最終決戦では、多くの仲間が傷つき、命を落としました。伊之助はその姿を見て涙と怒りを抑えることができませんでした。
「他の生き物との力比べだけが俺の唯一の楽しみだ!」と過去に言い切っていた伊之助が、無惨戦では仲間のために涙を流し、命を懸けて戦う姿は、彼の成長を象徴しています。
このように、伊之助は多くの仲間との出会いと交流を通じて、自らの心を育て、仲間を大切にする心を身につけていったのです。
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