『ざつ旅 -That’s Journey-』の第1話を視聴して、「これは“水曜どうでしょう”を真似てるのでは?」「似ているのでは?」と感じた方も多いのではないでしょうか。
実際、ざつ旅では人気企画「サイコロの旅」への敬意が込められた演出が随所に見られます。
本章では、両作品に見られる共通の演出や構成、そして作者である石坂ケンタ氏がどのような思いで描いているのかについて解説します。
ざつ旅の“サイコロ旅”は水曜どうでしょうの真似?似すぎてる?
ナレーション演出・展開の共通点
ざつ旅の第1話では、主人公・鈴ヶ森ちかが「サイコロの旅」をテレビで観る場面から物語が始まります。
そこでは、アスペクト比4:3の映像に、男性2人がサイコロを振って旅の行き先を決めるシーンが再現されており、明らかに『水曜どうでしょう』を意識した構成となっています。
ナレーションもまた、落ち着いた口調で状況をユーモラスに伝える形式で、どうでしょうファンには馴染み深いスタイルです。
水曜どうでしょうのサイコロ旅の概要
水曜どうでしょうのサイコロ旅は次の特徴があります。
- 移動手段…深夜バス、列車など
- 決定方法…サイコロ
- 演出…ナレーション&編集(ギャグ)
ざつ旅の似ている場面・概要
- 移動手段…SNSアンケートで決定
- 決定方法…SNS(ダベッター)で投票
- 演出…モノローグ&回想
水曜どうでしょうとざつ旅の特に似ている点
中でも「6の目で札幌に戻る」という選択肢の存在は、どうでしょうの「企画終了・札幌帰還」を明確に再現したもので、細部にまで配慮されたオマージュといえるでしょう。
作者・石坂ケンタ氏のコメントに見るオマージュの意識
2025年5月時点では、作者・石坂ケンタ氏が公式に「水曜どうでしょうを意識している」と公言した記録は確認されていません。
しかし、SNSやファンの感想では、「これは明らかにどうでしょうの影響を受けている」との声が多数を占めており、いわば“公然のオマージュ”として認識されています。
また、演出のタイミングやセリフのやり取りのテンポ感は、「サイコロ2」や「試験に出るどうでしょう」など名エピソードを彷彿とさせる要素が詰まっています。
明言せずとも伝わる形で、『ざつ旅』は“水曜どうでしょうの精神”を現代のアニメ作品へと取り入れた、ユニークな表現例だといえるでしょう。
水曜どうでしょう「サイコロの旅」とは?
元祖・行き当たりばったりサイコロの目で運命が決まる旅企画
『水曜どうでしょう』は1996年に北海道テレビ(HTB)で放送開始されたローカルバラエティ番組です。
その中でも特に人気を博した企画が「サイコロの旅」シリーズでした。
この企画では、6つの目的地を用意し、サイコロを振って出た目の場所へ必ず向かうという過酷かつユーモラスなルールが設定されていました。
大泉洋の驚きのリアクションや不満を叫ぶ名セリフがファンの間で語り草となり、ネット上のミームとしても人気です。
サイコロの旅ルール
- 行き先の決定…サイコロの出目で即移動
- 目的地の決定…現地から乗れる交通機関を元に設定
- 使用アイテム…サイコロキャラメル型の巨大サイコロ
1996年から続く伝説の企画とその人気の理由
番組初期から登場したこの企画は、最終的に国内外を含む7シリーズ以上が制作されました。
予測不可能な展開と、出演者が実際に苦しみながらも笑いを生むリアルな姿が支持され、深夜番組ながら異例の人気を誇りました。
特に「サイコロ2」では深夜バスの連続移動によって出演者が疲弊する姿が印象的で、「サイコロ韓国」では唯一の海外版が展開されるなど、多彩な展開を見せました。
この企画の最大の魅力は、視聴者も出演者と同じように「何が起きるかわからない」旅を共に楽しめる一体感にあります。
ざつ旅と水曜どうでしょうの共通点
ナレーション構成やテンポ感が酷似
『水曜どうでしょう』では、藤村ディレクターによるナレーションが番組の核となっており、出演者の行動に対するツッコミや実況が独自のリズムを生み出していました。
一方『ざつ旅』では、主人公のモノローグがその役割を果たし、ナレーション的要素を含みつつ展開のテンポを整える構成となっています。
旅の“行き当たりばったり感”のリアリティ
どちらの作品も、緻密な計画ではなく、予測不能な流れの中で旅が進んでいく構成が特徴です。
『ざつ旅』はSNSで行き先を募り、観光地や行動内容がその場のノリで決まっていきます。
『水曜どうでしょう』もサイコロに全てを委ねるスタイルで、両作品は共に“行き当たりばったり”のリアリティを追求している点が共通しています。
- 視聴者が展開を予測できない構成
- 登場人物の戸惑いをそのまま描写
- 実在の地名や場所の登場で臨場感が生まれる
偶然性を楽しむ“旅のスタイル”としての魅力
計画的な旅だけが楽しいわけではありません。
『ざつ旅』や『水曜どうでしょう』のように、偶然に身を委ねる旅こそが新しい発見や感動を生み出すこともあります。
その不確実性こそが、視聴者や読者を強く惹きつける要素になっています。
ざつ旅と“水曜どうでしょう”の価値観
『ざつ旅』は、SNSを通じて行き先を決定するという現代的な手法を取り入れつつ、旅の偶発性を肯定的に描いています。
「どこへ行くかより、どう楽しむか」が旅の本質であるという、まさに“どうでしょう”が大切にしてきた哲学が、令和の価値観とともに再解釈されています。
その姿勢は、効率や最適解を求めがちな現代において、「不確かさを楽しむこと」の価値を再認識させてくれるものです。
まとめ:ざつ旅と水曜どうでしょうの共通点
ざつ旅はオマージュといえる
『ざつ旅』第1話で登場したサイコロ旅の演出は、映像比率や札幌に戻る選択肢の存在など、『水曜どうでしょう』を思わせる要素が多く含まれています。
ただし、石坂ケンタ氏は公式には「オマージュである」と明言しておらず、あくまで文化的影響のひとつとして自然に作品へ溶け込ませています。
共通コンセプトは「自由」
『ざつ旅』は、こうした“決めすぎない旅”を肯定し、自分の感情に素直になれる時間として旅を描いています。
- 予期せぬ行先&偶然が生む特別な出会い
- 計画に縛られない旅はより感情を揺さぶり心を開放する
- 視聴者も旅に同行しているような感覚を持てる
このような旅の在り方は、若者の間で「チルい」といった言葉が流行する令和の今だからこそ求められる感性なのかもしれません。
『ざつ旅』と『水曜どうでしょう』は、時代を超えて“自由な旅の精神”を伝えてくれる稀有な作品同士ともいえます。
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