八咫烏シリーズ(アニメ版:烏は主を選ばない)の登場人物、藤波は「山内」と呼ばれる世界に住む宗家、すなわち皇族の内親王です。
このシリーズは、藤波の兄である奈月彦が『烏に単は似合わない』で日嗣の御子(皇太子)に即位し、彼のお后を選定する場面から始まります。藤波はお后選びに密接に関与するものの、そのプロセスを終えた後、物語から姿を消します。
以下では、藤波の宮がどのような人物であるか、そしてなぜ『烏に単は似合わない』の後、物語に登場しなくなるのかについて詳しく説明します。
八咫烏シリーズ(アニメ烏は主を選ばない)の藤波
八咫烏シリーズに登場する藤波は、「山内」という世界における宗家、つまり皇族の一員で内親王です。彼女は『烏は主を選ばない』において、主要キャラクターである若宮奈月彦の妹として描かれています。
藤波の背景と性格
藤波は、異母兄である長束とは異なり、奈月彦とは同じ母を持ちます。
このため、彼女と奈月彦は血の繋がりが深い兄妹です。
彼女は12歳で、見た目は父親似の貴族的特徴を持ちつつ、美人である母と異なり比較的平凡な容姿をしています。
藤波は宗家で箱入り娘として育ち、彼女の人生において男性と接する機会は限られていました。主に父親と親しくしてくれた優しい兄、奈月彦の存在が大きく、彼女は奈月彦に淡い恋心を抱くようになります。この片思いは物語の中で重要な役割を果たします。
藤波の母親とその死
藤波の母である十六夜は藤波が幼い頃に亡くなっており、藤波は母の記憶をほとんど持っていません。そのため、滝本が彼女の養育係として育て上げました。
滝本は内親王としての礼儀や振る舞いを厳しく教えたものの、愛情を伝えることが苦手で、藤波にはなかなか心を開かせることができませんでした。
羽母(乳母)としての浮雲
一方、藤波の羽母である浮雲は、彼女をとことん甘やかし、自由に育てました。
浮雲はあせびの母です。
藤波は浮雲とその娘あせびとの間で姉妹のような関係を築き、「おねえさま」と呼ぶほど親しみを感じています。
浮雲の優しい接し方が藤波にとっては息苦しい生活の中での唯一の安らぎであり、結果的に彼女は滝本よりも浮雲に心を寄せるようになります。
このように藤波の宮は、厳しい宮廷生活と家族との複雑な関係の中で成長していくキャラクターです。八咫烏シリーズの中で彼女がどのように描かれ、物語にどのように影響を与えていくのかが見どころの一つと言えるでしょう。
『烏に単は似合わない』その後藤波が登場しない理由
『烏に単は似合わない』の物語を進行していく中で、藤波がシリーズから姿を消す理由は彼女が犯した二つの重大な過ちにあります。
后選びでの不正行為
藤波は后選びのプロセスで重大な不正を犯しました。
具体的には、藤波は自分の親しい姉であるあせびが若宮・奈月彦の后に選ばれるよう策を講じました。彼女は奈月彦とあせびの間でのみ手紙のやり取りができるよう秘密裏に手配し、他の候補者が奈月彦と交流することを妨げました。
この行為は彼女の一方的な感情から起こったもので、皇族としての職責を逸脱しています。
早桃の死に関与
さらに悪化させる出来事として、藤波は競争相手である早桃を死に至らしめる行為に及びました。
早桃があせびとの関係を疑い、問題を起こす可能性があると感じた藤波は、彼女を桜花宮の崖から突き落としました。この時、藤波は早桃が鳥の姿に変身して飛べると誤解していましたが、早桃は変身することなく落下し、命を落としてしまいます。
これらの行為は若宮によって暴露され、藤波の行いは彼女がシリーズの後半で登場しない重要な理由となりました。若宮は家族としての情に流されず、藤波の罪を公にし、彼女の行動が不適切であったことを明確にしました。
藤波の行動は、彼女がどれほど若宮やあせびを愛していたか、また、その愛がいかに歪んでいたかを示しています。
彼女の物語は、愛情がどれほど深い影響を与えるか、そしてそれが時として破滅的な結果を招くことを物語っています。
『追憶の烏』での藤波の行方
『追憶の烏』に至るまでの間、藤波の宮は公の場に姿を現しませんでした。その期間、彼女はどのように過ごしていたのでしょうか?
尼寺での保護生活
藤波の宮は大紫の御前によって尼寺で保護されることになります。彼女は尼寺で静かに暮らしながら、周囲からの注目を避けていました。
『八咫烏シリーズ外伝 烏百花 白百合の章』の一節によると、大紫の御前は彼女に金魚が描かれた「鬼火灯籠」を贈ります。この行動は、大紫の御前が藤波の宮に特別な感情を抱いていることを示唆しています。
なぜ大紫の御前が藤波をこれほどまでに気にかけていたのか、その理由としてファンの間では、大紫の御前が藤波と似た状況にあった弟・融に対して持っていた感情を藤波に投影していたとも考えられています。しかし、この保護が後に若宮にとって痛恨の事態を招く原因となってしまいます。
『追憶の烏』での重大事件
藤波は『追憶の烏』においても重要な役割を担います。彼女は物語の中で再び大きな事件を引き起こし、それがシリーズ全体に影響を及ぼします。
最終的には、藤波の宮は自身が引き起こした悲劇の場所である谷底へ飛び降り、自害してしまいます。この行動は彼女の悲痛な心境を物語っており、彼女が経験した悲しみと孤独が如何に深いものであったかを示しています。
藤波の最期は、彼女がどれほど長束や奈月彦に見放され、孤立していたかを象徴しており、彼女の人生の虚しさを感じさせます。
まとめ雑感
藤波のストーリーは、八咫烏シリーズ中で特に感動的です。
内親王としての高貴な出自にもかかわらず、藤波は激しい愛と深い悲劇を経験します。奈月彦への一途な愛情が彼女を誤った行動へと駆り立て、結果的に早桃の死に関与する重大な過ちを犯します。
孤独と孤立感は彼女の苦悩を深め、最終的に自害に至らせます。藤波の宮の生涯は、愛と悲劇を通じて、シリーズに深い感情的な共鳴とストーリーの深みを与えているといえます。
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