宮﨑駿監督の最新作『君たちはどう生きるのか』を観て、「正直よくわからなかった」「意味不明で支離滅裂に感じた」と思った人も少なくないようです。実際にSNSやレビューサイトには、“初見では理解できなかった”という声が多数寄せられています。
では、なぜこの作品は多くの人にとって「難解」と感じられるのでしょうか?その背景と理由を紐解いていきます。
君たちはどう生きるのか初見で「意味不明」と感じるのはなぜ?
急展開と説明の少なさ
多くの視聴者が戸惑うのは、その急展開の連続と説明の少なさです。
物語は少年・眞人の視点で進みますが、現実と幻想が交錯する展開は非常にスピーディーで、観ている側が理解を追いつかせる暇もなく話が進んでいきます。
世界観そのものが掴みきれない
さらに「鳥の国」や「石の世界」など、世界観そのものが象徴やメタファーの塊のようになっており、明確な説明がないまま進行するため、初見では何が起きているのか掴みきれない人が多いのも無理はありません。
メタファーの多用と説明の排除
この作品は、宮崎駿監督の自伝的要素や、ジブリへの批判、創作活動への皮肉など、極めて個人的なメッセージが散りばめられています。
たとえば、大叔父が作った「石の世界」は、宮崎監督自身の創作世界のメタファーとも言われており、インコ大王=鈴木敏夫プロデューサー、墓の主=高畑勲、という比喩を読み解くと、見方が一変するという意見もあります。
しかしながら、こうしたメタファーに明確な“答え”は提示されておらず、観る人によって解釈が無数に分かれる作りになっています。そのため「支離滅裂」と感じる人がいても不思議ではありません。
君たちはどう生きるのかは支離滅裂?
「何度も観ることでわかる」構造
多くの観客が共通して言及しているのは、一度では理解しきれないという点。
これは『エヴァンゲリオン』や『2001年宇宙の旅』などと同様に、複数回観ることで新たな発見があるタイプの映画ともいえます。
「初見でポカンとしたけれど、もう一度観たくなる」「気になって何度も見返したくなる」という感想が多いのもこの作品の特徴です。つまり、“わからなさ”自体が魅力となっている側面もあるのです。
「支離滅裂」なのではなく“集大成”
一見するとまとまりがないように見える展開も、宮崎駿監督のこれまでの創作人生の集大成として見ると、意図的に構築された混沌であると捉えることができます。
過去作へのオマージュ、創作への愛憎、スタジオジブリへの複雑な感情──そのすべてを込めた「心のドキュメント映画」とも言えるでしょう。
まとめ:理解不能ではなく“多層的”な作品
『君たちはどう生きるのか』が「意味不明」「支離滅裂」と感じられるのは、それが単なる物語ではなく、多くのメッセージや比喩、そして作り手の葛藤が複雑に折り重なっているからです。
1回観ただけではすべてを読み取るのは難しく、むしろ何度も向き合うことで、自分だけの答えが見えてくる──それが本作最大の魅力なのかもしれません。
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