『薬屋のひとりごと』において重要な役割を果たす人物、壬氏について詳しく考察していきます。
壬氏は、皇帝の妃である玉葉妃に仕える存在であり、猫猫が所属する後宮においても責任ある立場を担っています。
また、女性関係などの問題が起きないように後宮に仕える男性はすべて宦官とされており、壬氏もその一人として位置付けられています。
この制度はのちに廃止されましたが、当時の後宮においては一般的な慣例でした。
壬氏は、後宮に数少ない男性の中でも特に目立つ存在であり、容姿は天女のように美しく、声も甘美で多くの者の憧れの的となっています。
自身の美しさを理解しており、場合によってはその魅力を駆使して物事を穏便に処理することもあります。
一見すると後宮の管理者のように思われる壬氏ですが、その素性は謎に包まれており、極めて高い身分を持つことが仄めかされています。
果たして、彼の本当の正体とは何なのでしょうか。
薬屋のひとりごと壬氏(じんし)の秘密&正体
ここからは、謎に満ちた壬氏という人物について、掘り下げていきます。
現皇帝と阿多妃との子供
壬氏の出生に関する秘密は、物語の中でも重要な要素となっています。
表向きには皇帝の弟という立場にありますが、実際には阿多妃と皇帝の子である可能性が示唆されています。
園遊会で発生した里樹妃暗殺未遂事件では、阿多妃の侍女頭である風明が関与していたとされています。
この事件に関連して、猫猫はある推測を立てました。
それは、同日に皇后と阿多妃が出産を迎え、万が一の際には「皇帝の子を優先する」という判断に基づいて赤子が入れ替えられたのではないかというものでした。
その結果、壬氏は現皇帝の子であり、母親は阿多妃であるという考えが浮上しています。
同日に誕生した二人の男児がいたことは確かですが、この情報の真偽については定かではありません。
高順が語った内容からも、彼自身が真実を知らされていない可能性があります。
本人も思い込んでいた皇弟ではない
壬氏は、自分が皇帝の弟であると信じていました。
原作には、彼がかつて父と思っていた人物が実は兄であり、祖父と思っていた人物が本当の父であったことを思い出す場面があります。
この記憶は、壬氏が後宮で26歳とされている一方で、実際には19歳であるという設定にも関係しています。
先代の皇帝と皇太后との間には大きな年齢差があり、皇太后は若くして壬氏を出産しました。
そのため、壬氏が年齢差のある兄を父と誤認していたのも不自然ではありません。
しかし実際には、壬氏は皇帝と阿多妃の子であり、皇太后の子ではないと考えられています。
壬氏自身もこの事実を知らず、安氏の実子だと信じていたため、現皇帝を兄だと誤解していたのです。
現皇帝の実子なので皇位継承するべき人物
上記の通り、壬氏は皇帝の実子であり、本来であれば皇位を継承する立場にあります。
壬氏の素性が隠されていたため、長らく皇帝には男児がいないとされていました。
しかし、後に玉葉妃との間に皇子が誕生したことで、彼が次の皇帝候補として表舞台に立つことになります。
東宮としての立場を得た皇子に対して、年長の壬氏が実子であることが明かされれば、皇位継承の争いに発展する可能性もあります。
そのような状況において、壬氏が排除される危険性も否定できません。
壬氏は容姿端麗で知性にも優れており、皇太后や高順などからも信頼を寄せられています。
もし彼が自らの出自を知ることになれば、物語は大きく動き出すことになるでしょう。
故意に赤子の入れ替えがされて皇弟となった
壬氏の出生について、さらに深く整理すると以下の通りです。
- 実の父は現皇帝、母は阿多妃
- 皇弟ではなく真の皇太子
- その事実を知る者は限られており、壬氏本人も知らない
ここで問題となるのが、「赤子の入れ替え」が意図的に行われた可能性です。
この背景には当時の後宮における身分制度が深く関係していました。
壬氏が誕生した頃、同時期に二人の赤子が生まれています。
一人は先帝と皇太后の子、もう一人が現皇帝と阿多妃の子である壬氏です。
どちらも皇位を継ぐ可能性を持つ男子でした。
皇太后は、猫猫の叔父である羅門の手により帝王切開で出産し、その代償として体には傷が残りました。
一方で、阿多妃も難産ながら無事に出産しましたが、地位の面から優先されるのは皇太后の子でした。
そのため、阿多妃は「無事に育つことが第一」と考え、わが子を皇太后の子とすり替える決断を下したのです。
それは、母としての深い愛情から生まれたものであったと推察されます。
結果的に、阿多妃の赤子は間もなく死亡し、皇太后の子だけが育っているとされたのです。
しかし実際には、阿多妃の子である壬氏が生き残っていたことになります。
この入れ替え事件は、後に侍女頭の風明による殺人未遂事件にも繋がるなど、物語に大きな影響を与えています。
宦官のふりをしているだけで身体的欠損はない
壬氏に関する最も大きな真実は、彼が実際には宦官ではないという点です。
表向きは宦官とされていますが、それは高貴な血筋を隠すための偽装でしかありません。
壬氏は、男性機能を抑える漢方を日常的に服用しています。
この薬は非常に強力で、長期間服用すれば本当に不能になる可能性があるとされています。
そのため、家臣の高順も壬氏の健康を案じていました。
また、壬氏の実年齢は19歳です。
将来的に皇位を継ぐことになれば、子孫を残す必要も出てくるため、身体的な機能を失うわけにはいきません。
現皇帝の時代には、宦官の制度自体が廃止されています。
このような背景を考慮すると、壬氏が宦官を装っているのは、あくまで身分を隠すための手段に過ぎないことが分かります。
壬氏(じんし)の秘密・目的
ここからは、壬氏が後宮に身を置いている目的について解説してまいります。
なぜ彼は、身分を隠し宦官として行動しているのでしょうか。
反皇帝派の存在を発見し後宮の調和をはかる
理由の一つに、皇帝の命令によるものという背景があります。
皇帝であっても、後宮全体の動向を常に把握することはできません。
反対勢力が内部に潜んでいた場合、寝首をかかれる危険もあります。
そのような脅威に対処するため、美貌と武芸の才を兼ね備えた壬氏が後宮を監督しているのです。
壬氏は上級妃のみならず、中級妃や下級妃の動向も監視し、忠誠心や貞操の有無を含めて調査・報告を行っています。
もちろん、壬氏の素性が知られていないため、宦官であれば問題ないと考えて接近してくる女性も少なくありません。
一部の妃やその関係者は、後宮という立場を利用し、反皇帝派として陰謀を巡らせている場合もあります。
壬氏はこうした不穏な動きを見逃さず、裏で進む謀略を未然に防ぐ役割も果たしていると考えられます。
子を成すために良き皇后の選別・排斥を行う
皇帝の重要な務めのひとつに、王朝の存続を担う子孫の繁栄があります。
そして妃たちの役割は、皇子を出産することにあります。
後宮においては、知識・教養・美しさだけでなく、皇后としてふさわしい器を持つ妃でなければなりません。
そのため、適任者の選定や、状況に応じて不適格な妃を退ける必要があります。
中には先帝の時代から後宮に残っている妃もおり、現皇帝の趣向に合わず臣下に嫁ぐことや、実家へ戻り再婚する例も存在します。
ただし、妃の家柄や政治的背景によっては単純に排除できるものではなく、慎重な判断が求められます。
たとえば、里樹妃は上級妃に位置づけられているものの、年齢が幼いため皇帝が訪れた形跡はありません。
このように、形式的な地位と実質的な役割が一致しないケースも見受けられます。
現皇帝は皇太子として正妻を探す意図も望んでいる可能性も
壬氏が皇太子である可能性を踏まえると、将来皇位を継ぐ前に正妻を見つける必要があります。
即位後では時期を逸する可能性があるため、今のうちに妃候補を見定めておく必要があると考えられます。
ただし、自身の身分が隠されているため、表立っての行動は困難です。
そのため、後宮を管理する立場を利用し、自然な形で正妻となるにふさわしい相手を探しているのではないかとも推測されています。
また、皇帝や皇太后も壬氏に良縁があることを願っており、それが遠回しに現在の役割に繋がっている可能性もあります。
とはいえ、壬氏は当初から猫猫に対して一途な思いを抱いており、周囲もその気持ちに気づいています。
しかし、当の猫猫だけはその想いに気づいていないか、あるいは気づかないふりをしているように見えます。
幾度となく進展の兆しがありながらも、絶妙なタイミングで邪魔が入り、恋愛には発展していません。
今後、物語が進行する中で二人の関係がどう変化していくのか、期待が高まります。
コメント