『薬屋のひとりごと』には、多彩で個性あふれる登場人物が多く描かれています。
今回はその中でも、とりわけ謎の多いキャラクターである「子翠」について考察いたします。
子翠が初登場するのは、単行本第8巻・第32話「隊商」のエピソードです。
鈴麗公主が子猫を追って迷い込んだ先で、子翠がその猫を捕まえてくれていました。
この出会いが、猫猫たちとの最初の接点となります。
その子猫は後に後宮で飼われることになり、この出来事をきっかけに子翠と猫猫たちの関係が始まります。
その後、子翠は小蘭と旧知の仲であることが判明し、猫猫の侍女仲間として急速に親しくなっていきます。
虫が好きで薬草に詳しいという共通点から、猫猫と似た者同士だと小蘭にも言われていました。
振り返ってみると、あまりにも多くの共通点があったことに気づかされます。
では、この子翠の正体とは一体何者なのでしょうか。
薬屋のひとりごと子翠の正体は楼蘭?
子翠と楼蘭は同一人物
ファンの間では、「子翠は可愛らしく、癒される存在」として人気の高いキャラクターです。
長身でありながら無邪気な言動を見せる姿に、親しみを覚える方も多いことでしょう。
しかし実は、子翠の正体は「楼蘭妃」だったことが明かされます。
楼蘭妃といえば、華やかな装いと化粧で登場し、皇帝も困惑する場面がありました。
猫猫が上級妃たちに性の知識を教える場面では、楼蘭妃は視線をそらし、興味がない様子を見せていました。
実際に、夜伽よりも虫に関心があったようです。
ただし、配られた道具はしっかり持ち帰るという抜け目のない一面もありました。
下女に扮して小蘭や猫猫と一緒にいた
子翠は、下女として猫猫たちと共に行動していました。
普段は誰かと入れ替わりながら、夜や行事の際には楼蘭妃としての役割を果たしていたと考えられます。
おそらく、息抜きや情報収集を目的として下女の姿で後宮に溶け込んでいたのでしょう。
また、湯殿でマッサージの仕事をしていたのも、宮中の噂を引き出すための手段だったと推察されます。
玉葉妃も、猫猫に対して「面白い話があれば教えてほしい」と声をかけていたことから、後宮内の情報収集には一定の意図があったと見られます。
教養や知識を持っていたのは妃だったから
子翠は虫の絵を描くために高級な紙を使用し、高級なジャスミン茶を飲んだ経験もあるなど、下女にしては不釣り合いな行動が目立っていました。
当初は「裕福な家の出身なのではないか」と考えられていましたが、その後の展開で妃であったことが明らかになり、すべての行動に納得がいきます。
子翠は子昌の娘であり、楼蘭妃という上級妃の立場にありました。
名前に同じ漢字が使われている点も、それを裏付けています。
そのため、一般常識や礼儀作法を身につけているのは当然のことであり、高官の妻や妃としての教育を受けていたのでしょう。
子翠の目的とその後は?
ここからは、子翠の目的について考察します。
壬氏や医局からの警戒を緩め情報を探るため
まず考えられるのは、猫猫と接触することで、壬氏や医局からの警戒を緩めるという目的です。
猫猫は壬氏に重用されており、また医局でも信頼されている人物です。
子翠は、薬や毒に関する知識を得るため、猫猫と行動を共にしようとしていた可能性があります。
また、猫猫が翡翠宮や水晶宮を訪れることで、後宮の情報を得ようとしていたのかもしれません。
生きている可能性が高いと考察
子翠(楼蘭妃)は小説の描写において、銃で胸を撃たれ、籠城していた砦から飛び降りたとされています。
しかし、遺体は確認されておらず、生存している可能性が示唆されています。
その後、港町で「玉藻」という名前の少女が登場します。
顔は明らかにされていませんが、美しい容貌をしており、「後宮の花のようだ」と評されています。
この描写が、かつて後宮で妃であった楼蘭を指しているのではないかと考えられます。
また、玉藻が男性と簪を用いてさまざまな物と交換していた場面もありました。
猫猫も壬氏からもらった簪を餞別として渡しており、このエピソードとの共通点も見られます。
玉藻は「海の向こうの世界」に関心を寄せており、過去を知られることのない新天地を目指しているように描かれています。
そして、未知の生き物を求めるその姿勢は、かつての子翠と重なる要素が多く見られます。
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