『よふかしのうた』では、主人公・夜守コウに吸血鬼のような兆候が見られるようになりました。 物語の中で「半吸血鬼化」という言葉が登場し、普段とは異なる凶暴性を帯びた様子が描かれています。
これまで穏やかな性格だったコウですが、半吸血鬼化の影響で攻撃的な側面が現れています。
本人の意思とは関係なく変化が起きているようにも見えますが、果たして何が引き金となっているのでしょうか。
本記事では、夜守コウが半吸血鬼化する理由や、その要因として考えられる「血」について詳しく考察します。
よふかしのうたのコウは半吸血鬼化する?
コウは半吸血鬼化した状態を制御する訓練をしていた
コウはナズナと共に半吸血鬼化した状態を制御する訓練にも取り組んでいます。
この修行の中で彼は以下のような能力を発現させました。
・瞬時に間合いを詰める速度
・構造物を破壊できるほどの力
・ナズナを防御ごと吹き飛ばす攻撃力
・感情の高まりに伴う闘争性の増加 これらの能力は、完全な吸血鬼に近いものと言えるでしょう。
コウの体質は徐々に変化しており、眷属になる日はそう遠くないように思われていました。
コウが吸血鬼化しない理由とは
結論からお伝えすると、コウは吸血鬼化することはありませんでした。
最終章の流れを元に解説していきます。
恋の告白、そして仲間たちとの別れ
19巻では、コウとナズナが“血を吸う・吸わない”という小さな言い争いを経て、ナズナがついに自分の恋心を告白します。
それを受けて、コウもまた彼女への特別な想いに気付きます。
これまで“恋とは何か”を探していた少年が、その答えをようやく自覚するという、感情の大きな転換点でした。
その後、吸血鬼たちは一つの区切りとして解散し、それぞれの道へと旅立ちます。
探偵である鶯アンコも日本を離れる決意をし、コウたちとは別れを迎えます。
ナズナとの最後の“よふかし”と別れのキス
物語は20巻で静かにクライマックスを迎えます。
ナズナとコウは、かねてから行きたかった“海”へと夜の散歩に出かけます。
ナズナは、自分の気持ちがまだ落ち着いていないことを理由に、当面はコウと距離を置くことを決めていました。
そして夜の海辺で、最後にひとつだけキスを交わし、彼の元を飛び去る姿が描かれます。
1年後再会の予兆と成長したコウ
それから1年が経過し、高校に入学したコウは、探偵・鶯アンコの助手になることを目標に歩き出します。
ベトナムでの生活が合わなかったアンコは日本に戻ってきており、再びコウと関わる立場に。
そんな日々の中、コウはあの夜を忘れることなく、自分の力で再びナズナを探す決意を固めていました。
雪国での再会、そして“愛人”宣言?
舞台は雪国へと移り変わります。
そこには、子どもたちと共に暮らしながら、謎の“おばさん”として子守りをしているナズナの姿がありました。
そこへ現れたのは、長い時間をかけて彼女を探し続けてきたコウ。
再会を果たした直後、ナズナは吸血衝動に駆られてしまいますが、それすらも想定していたコウは、彼女に絞め技を決めて制止します。
「もしナズナちゃんがまた逃げたくなったら、仕方ないし、そのときはまた探すよ」
そう告げるコウに対し、ナズナは「死ぬまで追いかけっこしようね」と笑顔で返します。
この言葉には、“愛”という一言では収まりきらない、ふたりだけの関係が詰まっていました。
そして、子どもたちの前でナズナが放ったのは「この人、私の愛人だから」という大胆な一言。
その場面で、物語は幕を閉じました。
なぜコウは吸血鬼化しなかったのか?
ひとえにコウがナズナへの恋心を自覚した後には血を吸われることがなかった上に、コウがナズナを探しながらも自己鍛錬や修行に明け暮れたのが理由と考えられます。
『よふかしのうた』は、“恋”という曖昧で複雑な感情を、吸血鬼と人間という異種の関係性に乗せて丁寧に描いた作品でした。
最終話では、明確な「ハッピーエンド」や「恋人」という言葉では語れない、けれど確かな絆がコウとナズナの間に結ばれていることが伝わってきました。
夜を舞台に始まったふたりの物語は、形を変えながら、きっとまだ続いていく――そんな余韻を残して、静かに幕を閉じたのです。
【よふかしのうた】コウについてまとめ
これまでの考察から、コウはすでに「吸血鬼としての片鱗」を大きくのぞかせていることが分かります。
最初はナズナとの関係性を深める中で徐々に変化してきましたが、探偵編やマヒルとの衝突を経て、確実に「人間ではない何か」に近づいてきました。
特に、痛みや流血といった明確なトリガーにより、吸血鬼のような能力を発現する様子は、もはや完全な“半吸血鬼”といっても過言ではありません。
そして物語が終盤に近づくにつれ、コウは自らの気持ちに向き合い、ナズナへの恋心を自覚します。
ナズナもまた、自らの感情と距離を取るために姿を消す決断をしました。
やがて月日が流れ、成長したコウが探偵助手としての目標を掲げ再びナズナの元を訪れるラストシーンは、静かで力強い再会の象徴となっています。
雪の中、子どもたちの世話をしていたナズナと再会し、吸血衝動を抑えるために格闘技を修めてきたコウは、もはや以前の少年ではありません。
「死ぬまで追いかけっこしようね」というナズナの言葉と、愛人としてコウを紹介するユーモアが混ざった締めくくりには、2人の関係性の変化と温もりが詰まっています。
こうして、『よふかしのうた』は、人間と吸血鬼という異なる存在の垣根を越えて、「好き」という気持ちと向き合いながら、夜の物語を静かに終えたのでした。
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